生体分子は物理的・機能的な相互作用によって多彩な細胞内シグナルを協奏的に制御することで、多様かつ柔軟な生命現象を形作っています。大規模な解析技術の発展に伴い、生命科学領域は大きな発展の途上にあり、日々驚くべき新たな知見が集積されています。しかしながら、種々の細胞の分化や機能に注目すれば、制御分子メカニズム不明かつ未同定の生命現象が山積しています。
健康な状態、すなわち生理的状態がいかにして維持されているのか?ということを理解することは、その破綻によって生じる疾患の発症機序を解明し、治療方法を探索するために必須といえます。どうしてこうなるのだろう? という、純粋かつ地道な基礎研究を推進することで初めて意外な生命現象を発見できるかもしれません。その結果、意図していなかった疾患の発症機序が理解されることで、治療法につながる新知見が得られることがあるはずです。
当研究室では、機能未知の生体分子の中でも生体膜に発現する膜タンパク質に主に注目し、その生理機能の解明により新たな創薬標的分子の同定を目指す生命薬学研究を展開しています。複数の生命科学研究手法と遺伝子改変マウスを用いることで、生命現象を分子から細胞、個体のレベルで統合的に解析する生理学研究を遂行します。生命現象を理解するための基礎生物学研究を通して、有用な新規創薬標的分子の同定や細胞内シグナル制御の破綻によって引き起こされる遺伝疾患等の病態解明に貢献することを目指しています。
立命館大学 薬学部 統合生理学研究室
市村 敦彦